展示中の作品の一つ「帝国ホテルの外観」Ⓒ2023 Shin YAMAGISHI

 1890(明治23)年に開業した帝国ホテル東京(東京都千代田区内幸町)の現在の姿をカメラに収めた写真展「帝国ホテルの記憶~IMPERIAL Legacy~」が、本館に隣接するタワー館「帝国ホテルプラザ東京」3・4階共用スペースで開かれている。写真家の山岸伸さん、佐藤倫子さんの夫婦が、それぞれの感覚で撮った外観や内装などの写真を展示。近代日本とともに歩んできた建築の貴重な記録となっている。

 「日本の迎賓館」としての帝国ホテル設立を呼びかけ、初代会長となったのが実業家の渋沢栄一(1840~1931年)だ。2代目の本館は、米建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライト(1867~1959年)が手がけた名建築として知られ、現在の本館は1970年に営業を始めた3代目だ。

 現在、本館とタワー館は建て替えの計画が進んでおり、本館は2031~36年度、タワー館は24~30年度を予定している(工期中も営業は継続)。本館には仏在住の若手建築家、田根剛さんのデザイン案が採用された。

 「新しいおもてなしを求めて未来に向けた計画が進む中、後世に残すべき今の風景を写真で残したい」。ホテル側と山岸さん、佐藤さんの思いが重なり、21年ごろから撮影が始まった。ホテル側から日比谷公園や霞が関の庁舎群を見渡す風景、ロビー、客室、シャンデリア、いす、バーラウンジ……。130年以上続いている、人々のくつろぎと接遇の記憶と歴史を閉じ込めたような写真が共用スペース(一部特設スペースあり)の壁に並んでいる。

山岸伸さんと佐藤倫子さん夫婦が帝国ホテルの今の風景を追った写真展=東京都千代田区の帝国ホテルプラザ東京で3月23日

 タレントやスポーツ選手などのポートレートで著名な山岸さん、クリエーティブなスナップで知られる佐藤さん。それぞれの着眼点で現在も撮影を重ねており、今後は、新型コロナウイルス禍でできずにいたホテル従業員たちの表情を収めた写真も展示していく。

 3月22日に始まった第1期の展示は4月27日まで(入場無料)。来年に向けて第2期、第3期……と続いていき、最終的にはタワー館1階のロビーまで展示スペースが拡大する見通しだ。山岸さんは「こんなに撮影しがいのある被写体は珍しいというか、日本の歴史そのものを撮っているような気分。妻と協力しながら展示を増やしていきたい」と語る。

2023年4月12日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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