クラウディア・アンドゥハルの写真(左)とヤノマミ族の女性のドローイング。写真の下にはダビ・コペナワの言葉が紹介されている

 国内外で活躍する写真家が集う「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」が、今年も京都の街中の12会場で開催中だ。写真を通して現代社会が抱える問題の解決を考える芸術祭。今年は、すべてのものの起源である「SOURCE」をテーマに掲げる。5月12日まで。

 10カ国13組が参加。京都文化博物館別館ではアマゾンの先住民族ヤノマミと、写真家で活動家のクラウディア・アンドゥハルを特集する。スイス出身のアンドゥハルは1970年代初めにヤノマミ族と出会い、彼らの主権を守る運動を展開してきた。同展では70年代の写真と、ヤノマミのシャーマンで、民族の権利を各地で訴えてきたダビ・コペナワの言葉、そして幅広い年代の作者によるドローイングを展示。森と暮らしてきた人々の歴史と現在を紹介する。

 二条城・二の丸御殿には、生命の神秘を感じさせる種子のポートレートが並ぶ。目を引く緑や赤の種子が実はケミカルコーティングが施されたもので、隣の一見地味な種子は伝統的な京野菜のものと知れば、種子生産をめぐる人間のあくなき欲望に思いが及ぶ。撮影は仏写真家のティエリー・アルドゥアン。

 京都芸術センターでは、「子どもたちの眠る場所」と題した展覧会が開かれている。広い空間を区切るように展示されるのは、28カ国35人の子どもたちと寝室の写真。子ども部屋の子は一部で、家族全員の寝室だったり、台所だったり。戦火を逃れた避難先で眠る子もいれば、路上に捨てられたソファが寝室の子もいる。

ジェームス・モリソン「子どもたちの眠る場所」の展示風景

 イタリア在住のジェームス・モリソンが手がけるプロジェクトで、紛争地や発展途上国だけでなく、あらゆる境遇の子どもを取り上げている。100以上の「子ども美人コンテスト」に出場してきた米ケンタッキー州の4歳の少女は、ディズニーアニメのプリンセスのような寝室。一方、同じ州で家族とトレーラーに暮らす12歳の少年は、オピオイドの過剰摂取で亡くなった父を今も慕う。兄と共有の寝室は衣類が散乱し、壁には亀裂が見える。モリソンは寝室とは切り離して、ポートレートを撮ることにこだわったという。自らの境遇を運命として背負いながら、こちらを静かに見つめる子どもたちの姿が、心に残る。

2024年4月22日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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