毎日ファッション大賞を受賞し、トロフィーを手に喜びを語るNIGOさん

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毎日ファッション大賞表彰式
これからも我流で 大賞受賞のNIGOさん

文:平林由梨、伊藤遥(毎日新聞記者)

ファッション

 今年で40回を迎えた「毎日ファッション大賞」。9月20日には東京都千代田区の大手町三井ホールで表彰式が開かれ、大賞を受賞したKENZOアーティスティックディレクター、HUMAN MADEデザイナーのNIGOさんや話題賞を受賞したシンガー・ソングライターの松任谷由実さんらが受賞を喜んだ。

 毎日ファッション大賞は1982年、毎日新聞の創刊110年を記念して設立された。表彰式の冒頭では、今年8月に相次いで亡くなった森英恵さん、三宅一生さんの功績がたたえられた。森さんは、コムデギャルソンの川久保玲さんを初代大賞に選んだ第1回から選考委員を務め、三宅さんは過去最多の3回、大賞を受賞している。

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 節目となった今年は90年代東京のストリートファッションをけん引し、海外にも多くのフォロワーを生んだNIGOさんが大賞を受賞した。紺色のストライプスーツで登壇し、盟友の「アンダーカバー」デザイナー、高橋盾さんの名前を挙げ「1993年、高橋くんと原宿の裏の方に小さなお店を出してからキャリアが始まった」と振り返った。「これまでは無冠を売りにやってきたが、今回、こうして権威ある賞をいただけて光栄です。これからも我流ではあるが、日本のファッションの楽しさ、日本文化の素晴らしさを国内外へと伝えていきたい」とあいさつした。

表彰式で披露された「FUMIE=TANAKA」のファッションショー

 新人賞・資生堂奨励賞を受賞した「FUMIE=TANAKA」デザイナー、田中文江さんは企業デザイナーとして約20年の経験を持つ。「この年になって〝新人〟の言葉は照れくさいが、年齢や経験に関係なく、やる気や好奇心、行動力が評価された」と喜んだ。そして「私の受賞が、自分を信じ、夢に向かって進む人にとって希望になれば幸い。私もまだまだ夢の途中。これからも新しいことに興味を持ち続けていきたい」と結んだ。田中さんは2022年秋冬コレクションを特別構成で見せるショーも披露した。

 長年ファッション界の発展に寄与した「縁の下の力持ち」に贈られる鯨岡阿美子賞はスタイリスト歴40年の北村道子さんが受賞した。「私自身、こんなに長く自分の仕事をしているとは思ってもいませんでしたので、ちょっと驚いています」。70年代後半から広告や雑誌で活躍し、映画衣装のスタイリングでも高い評価を集める北村さん。「長くやっているとこういうご褒美がもらえて、感謝です」と喜んだ。

 ファッショナブルな生き方を体現しているとして話題賞を受賞したのは今年デビュー50年を迎えた松任谷由実さん。ヒール高10㌢はあるパンプスを履いて登場。「誇らしい気持ちでいっぱいです。これからは大手を振ってファッションピープルの前ではミュージシャンの顔をして、ミュージシャンの前ではファッショニスタの顔ができます」とあいさつし、会場の笑いを誘った。「今までどんなことがあってもファッションは私を勇気づけてくれた。これからも歌を作ることとパフォーマンス、〝文武両道〟で頑張りたい」

 また、同じく話題賞を受賞した「デニム de ミライ ~Denim Project~」は、協業した企業などの代表7人がそろって登壇。発案者の伊勢丹新宿店リ・スタイルバイヤー、神谷将太さんは「サステナブルやSDGsが当たり前になる未来を目指しながら、ファッションはその中にあっても豊かさや高揚感を与えられるものだと信じてこれからも企画を続けていきたい」と語った。

2022年10月5日毎日新聞・東京夕刊 掲載

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