リニューアル工事を終えた大阪市立美術館。正面の大階段脇にエントランスが新設された=いずれも大阪市天王寺区で

 約1年9カ月にわたるリニューアル工事を終えた大阪市立美術館(大阪市天王寺区)が12日、来春の再オープンに先駆け、報道陣に公開された。「ひらかれたミュージアム」を掲げてエントランスの改修や無料ゾーンを設置したほか、最新技術を取り入れ、展示環境を改善。収蔵庫を拡張し、コレクションを守る環境も整備した。

 天王寺公園内にある大阪市立美術館は1936年、日本で3番目の公立美術館として開館した。2022年秋から休館し、約100億円をかけて開館以来初となる大規模改修を実施していた。

 国の登録有形文化財となっている建物の外観は維持し、正面の大階段を上らずに入館できるよう、両脇にエントランスを設置。1階中央ホールは美術館前の広場と裏側の日本庭園「慶沢(けいたく)園」を行き来できる無料ゾーンとし、旧展示室の一つを休憩室として開放するほか、慶沢園側にはカフェを設ける。

広々とした空間が広がる1階中央ホール。1970年代に設置されたシャンデリアは耐震上の問題で撤去した

 1階と2階にある展示室には最新の照明や展示ケースを導入し、鑑賞環境を改善。エレベーターの増設で開館中の展示替えを可能にし、これまで年間200日超だった開館日数を300日にすることを目指すという。約1万3500件に上る収蔵品の環境を整えるため、収蔵庫は760平方㍍から1360平方㍍に拡大。半地下にあるため、雨水対策も強化した。

 内藤栄館長は内覧会で、「市民の誇りや思いがあったからこそ大規模改修ができたと、館員一同重く受け止めている。その思いに恥じないよう努力し、世界中の人々に楽しんでいただける美術館にしたい」と語った。

最新の技術を生かした展示ケースについて説明する内藤栄館長

 再オープンは来年3月1日で、日本と中国の古美術品を中心とした同館が誇る名品や珍品を集めた記念特別展を開催する。

2024年7月13日 毎日新聞・大阪朝刊 掲載

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