外壁に変化を付ける階段の大窓(中央上)や細かな形の違いがある窓枠

 四日市あすなろう鉄道の西日野駅から川沿いを歩くと、民家の屋根越しに周囲と趣が異なる塔が見える。小高い丘の上に建つ「旧四郷(よごう)村役場」(三重県四日市市)だ。1921(大正10)年、地元出身の実業家、十世伊藤伝七の寄付で建てられた。四日市市と合併後も出張所として利用され、83(昭和58)年には四郷郷土資料館になった。2021(令和3)年の築100年を機に耐震補強と修理工事を施し、今年3月23日にリニューアルオープンした。

 外観はシンボリックな塔屋を構える。1階の横板張りや、2階の付け柱と付け梁(はり)がピンク系で着色され、ハイカラな装い。北側には、大きな窓や少しずつ形が異なる窓枠が目に入り、規則的な装飾の中にアクセントを付けている。

 館内は淡い緑系の色調が目立ち、アールデコ調の装飾が随所に施されている。特別に許可を得て、塔屋の3階へ上がった。窓からは四日市港周辺の工業地帯が一望でき、地域の近代産業の礎を築いた伝七のこだわりが感じられた。

塔屋の階段の3階から2階を望む(許可を得て撮影)

 開館は土・日曜の午前9時~午後4時。

カウンターの上に中央部分がゆるやかに膨らんだ柱が並ぶ旧事務室

2024年6月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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