建物東側からの眺め。手前が本館。右奥は増築された棟部分

 鳥のさえずりが心地よい音色を響かせ、木々の枝葉が風に揺れながらキャンパスの景色を彩る。東京都小平市の津田塾大学図書館本館(星野あい記念図書館)は丹下健三が手がけ、1954(昭和29)年に完成した。星野は創立者・津田梅子の後継として、同大を発展させた。

 2階建ての本館は、建築当初の姿を色濃く残している。1階部分にある南閲覧室は、天井高約5・5㍍で、大きなガラス窓が印象的だ。壁のない建築空間は、開放感をもたらす。閲覧室の外には常緑樹が建物を彩っており、自然の中にいるような一体感を生んでいた。花々や紅葉も楽しめ、季節で景色を変える。本館北側の5階建ての棟は丹下作ではないが、書庫などの拡充により2度の増築を経て現在に至る。

明るく開放感のある空間が広がる南閲覧室

 外観は装飾性を排した直線的な構成美が、モダニズム建築の粋を感じさせ、飽きのこない魅力を放っている。

 職員は親しみを込めて本館を「丹下館」と呼んでいるという。静寂の中、本に向かう利用者をうらやましく思った。

図書館にある津田梅子資料室で保管する丹下デザインの傘立て(非公開)

2024年6月2日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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