洞窟のような通路を坑口(奥のフェンス)に向かう。炭鉱マンたちはここからケージに乗って坑道へ下っていった

 角が取れ、ところどころが少し欠けた赤レンガ。黒ずんでいる部分は炭じんの影響だろうか。炭鉱マンが行き交っていた通路は思いのほか狭い。トンネルのような通路を抜ければ、約3㍍四方の坑口に出る。見上げると、頑丈な鉄骨でできた立て坑やぐらが目に入ってくる。

 旧三井三池炭鉱万田坑第二竪坑櫓(たてこうやぐら)(熊本県荒尾市)は1908(明治41)年に完成し、炭鉱マンや坑内作業で使用される機械の昇降を担った。採炭現場が変更されて採炭を終えた後も、坑内管理のため97年の閉山まで稼働していた。

 25人乗りケージ(エレベーターの籠)はやぐらの滑車を介して、その隣に建つ巻揚機(まきあげき)室の巨大なウインチとワイヤでつながれている。炭鉱マンたちはわずか1分で地下264㍍の坑道へ降りられたが、大きな気圧変化に悩まされた。巻揚機室には丸形や半円アーチ形の採光用の窓があり、炭鉱内で大型機械がうなりを上げていたとは思えないほど優雅だ。

鉄骨やぐら(左)の隣に建つ巻揚機室

 2015年には「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界文化遺産に登録された。

動力の蒸気を作った汽罐場(きかんば)の煙突跡から見上げた青空

2024年5月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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