和洋折衷の様式美を持つ建物

 古都らしい仏塔を思わせる相輪(そうりん)を備えた方形屋根が、和風意匠を強調している。一方、建物自体には、スクラッチタイル張りの壁面や縦長の上げ下げ窓など、洋風意匠を織り交ぜている。さらに内部は西洋風の白く太い円柱が屋根を支える。その柱やはりには飛鳥から奈良時代の建築物に多用された唐草文様が施され、和と洋の調和がみられる。

屋根の四隅につるされた風鐸(ふうたく)

 JR奈良駅旧駅舎(奈良市)は旧国鉄奈良駅の2代目駅舎として、1934(昭和9)年に建てられた。大阪鉄道管理局工務課の主任技師らによる設計で、もともとは他の懸賞設計に応募し落選した設計案を再利用したという。

柱やはりに施された唐草文様の意匠

 約70年間、奈良の玄関として親しまれたが、2003(平成15)年、高架化に伴い駅としての役目を終えた。当初は取り壊される方針だったが、住民らが「保存してほしい」と声を上げたため、北東に約18㍍移設された。09(平成21)年には、奈良市総合観光案内所として利用が開始された。今後も国内外からの観光客を迎え続ける。

2024年5月12日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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