西洋の城壁を思わせる日本初のバットレスダム「笹流ダム」

【レトロの美】笹流ダム 北海道函館市 市民の水がめ

文:貝塚太一(毎日新聞記者)

建築

 西洋の城壁を思わせる美しさと迫力がある北海道函館市の笹流(ささながれ)ダム。昨年12月に100周年を迎え、市の3分の1にあたる約5万5000戸の水がめとして今も活躍している。

 笹流ダムは高さ約25㍍、幅約199㍍。1923(大正12)年、日本初の「バットレスダム」として建設された。バットレスダムとは、水圧を受ける遮水壁を、格子状に組まれた補助的な壁が支える構造にした軽量ダム。当時高価だったコンクリートを節約するために採用された。この型式は日本で6基しか現存していない。

格子状部分を見上げると箱が浮遊しているような近未来感があった

 84(昭和59)年度に本格的な改修工事を実施する際、可能な限りこの型式のまま将来に残したいという函館市水道局(現企業局)の思いから、現在の外観となった。2001(平成13)年には土木学会選奨土木遺産に認定された。

施設開放期間にはダム上部を歩くことができる

 前庭広場ではダムを間近に見学できる。毎年4月第3土曜~11月23日は一般開放され、ピクニックや花見、紅葉の名所として親しまれている。また、ダム上部は安全が確保され歩道のようになっていて、水面を見渡せる。

2024年4月21日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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