切り妻屋根と窓列の調和が美しい建物

 岐阜市の中心部に位置する金華山のふもとの岐阜公園に、グリム童話に登場するような赤色の三角屋根の建物が建っている。

 シロアリの研究やギフチョウの発見で知られる昆虫学者、名和靖が創設した名和昆虫研究所の付属記念昆虫館。1907(明治40)年、研究資料の標本収蔵庫として建てられた。設計は建築家、武田五一が担当。名和は教職の傍ら昆虫を研究し、武田は名和の教え子だった。

チョウの図柄の屋根飾り

 1階は淡い黄色の常滑焼の外装タイルで覆われ、その上に木造トラスを組んだ屋根裏を2階としている。鉄板ぶきの屋根には、垂直に突き出た採光用のドーマー窓が片側に四つ連続する。この壁面は、陶板でうろこ状に装飾され、急勾配の切り妻屋根にアクセントをつけている。

ドーマー窓の壁面をうろこ状に飾る陶板

 許可を得て室内に入ると、1階標本室の中央に六角堂が建っていた。19(大正8)年、信心深い名和が還暦を迎えるにあたり、特別記念として武田が設計、奈良・唐招提寺のシロアリ被害の古材を再利用して建造した。

 内部の見学は、条件付きで受け付けている。要相談。

2024年4月14日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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