建物南側面、中央下が正面玄関。玄関上、両側に6本の柱形が見える

 子どもたちの元気いっぱいな歓声が、辺りに響き渡っていた。JR両国駅に近い横網町公園の中に建つ東京都復興記念館(東京都墨田区)は、関東大震災の惨状や復興事業を伝えることを目的に、1931(昭和6)年に建てられた。

目を引く正面玄関扉の装飾

 鉄筋コンクリート造り3階建て。建物南側の正面には、壁から突き出して半面が見える6本の「柱形」があり、重厚さを醸し出している。中央部にある4本の柱形の上部には、設計に関与した建築家、伊東忠太が好んでモチーフにした怪獣が、訪れた人を見つめるように鎮座している。

 外観は溝が多数あるスクラッチタイルに覆われている。洋館のようなイメージだが、屋根周りなどには社寺建築の意匠を取り入れている。

日差しを浴びる建物西側面。窓の上が換気口の装飾

 建物西側は正面とは違った表情を見せる。連続する凹凸が印象深く、窓上部の装飾された換気口が壁面のアクセントになっている。

 慰霊の場所でもある公園のシンボル的な記念館は、99(平成11)年に都の歴史的建造物に選定された。

2024年3月24日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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