約400年の歴史を持つ「矢切の渡し」の渡船場から江戸川を500㍍ほどさかのぼると、右岸に「とんがり帽子」と「丸帽子」が現れる。土手をはさんだ金町浄水場(東京都葛飾区)に水を送る取水塔だ。
浄水場は1926(大正15)年、江戸川上水町村組合の施設として給水を開始し、32(昭和7)年に東京市(当時)に移管された。上流側の「とんがり帽子」は第2取水塔で、41(同16)年に整備された。高さ9・4㍍の鉄筋コンクリート製で壁面下部はレンガ張り。東京市水道局の職員が設計した。特徴的な姿は、周辺を舞台にした映画や漫画にも登場する。
銅板の「丸帽子」は64(同39)年に完成した第3取水塔。高さは11・5㍍で、都水道局の職員が設計した。当初あった第1取水塔は、老朽化もあり第3取水塔建設に伴って撤去された。
1日平均約90万立方㍍を約290万人に供給する浄水場を支える取水塔が、愛嬌(あいきょう)のあるデザインになった理由は伝わっていない。歳月を重ねた二つの帽子は地域のシンボルとして、住民から親しまれている。
2024年3月17日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載