ビル街を抜けると、小高い丘に大きな台形が見えてきた。千葉大学ゐのはな記念講堂(千葉市中央区)は、緑に包まれた亥鼻(いのはな)キャンパスに建つ。医学部85周年を記念する建物として、建築家の槙(まき)文彦と竹中工務店が設計し、1963(昭和38)年に完成した。
木立の中に建つ「鎮守の森の社」のイメージで構想された。地上3階、地下1階。コンクリート打ち放しの外壁や銅板ふきの片屋根を持つ外観は、今も斬新なデザイン性を感じさせる。外壁のコンクリートは、杉板を組み立てた型枠で造られ、木目が浮かび上がる。講堂入り口の上には大きなどらの彫刻がある。正面のガラスウオールから、吹き抜けのホワイエに光が差し込み、刻一刻と表情を変える。
2014年の改修設計をした槙総合計画事務所によると、完成時の外・内観の意匠を損なわずに、耐震、音響性能などの機能の向上ができたという。築60年がたった今も現役であり続ける、貴重なモダニズム建築の一つだ。
2024年2月11日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載