玄関上(右)と2階への階段上にあるシャンデリア

 重厚な門扉から歩を進めると、松本記念音楽迎賓館(東京都世田谷区)が出迎えた。車載機器メーカー、パイオニアの創業者、松本望氏の自邸だった建物で、1973(昭和48)年に完成した。

 99(平成11)年に公益財団法人音楽鑑賞振興財団に寄贈された。2005年、音楽ホールや高級オーディオの視聴設備と茶室を備えた迎賓館として開館。閑静な周辺環境を保つことを条件に貸し出しを始めた。

丸みを帯びたアーチ状のドア。シンプルな壁面にぬくもりを感じさせている

 地上2階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。吹き抜けの玄関の明かり取りは大理石を薄作りした構造。玄関と階段の上にあるシャンデリアは大人の背丈ほどの高さがあり、その豪華さに目を奪われる。2階の音楽ホールにはパイプオルガンがあり、音楽文化を育む場となっている。

松本望氏が愛した工作室

 館内の華やかさとは違う工作室は、松本氏の創意工夫の場だった。ここで骨伝導で音を感じる「体感音響システム」の原形を生み出した。

 南側には区の保存樹林地に指定された静かな庭園が広がる。見学は同館の指定日に受け付けている。

静寂の空間に癒やされる庭の眺め

2023年5月28日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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