見る角度によって表情を変える切り妻屋根

 冬木立の丘陵地に、緑色の屋根と白い外壁がコントラストを描く。望楼が特徴的な愛知県陶磁美術館本館(瀬戸市)は、建築家の谷口吉郎が設計に携わり、1978(昭和53)年に愛知県陶磁資料館の南館、翌年に本館が開館した。同館のパンフレットを作成した建築史家の村瀬良太さんによると、開館時の規模はオイルショックなどの影響で当初計画の3分の1だったという。その後、増改築を経て94(平成6)年に現在の姿になった。

大きな窓と高い天井で開放的な玄関ホール

 外観は、長方形のタイルが均等に張られ、軒下に窓が水平方向に並ぶ規則性の中に、望楼と高さの違う切り妻屋根が表情に変化をつける。玄関ホールに入ると開放的な空間が広がり、谷口が手掛けたホテルオークラ東京本館(現在は建て替え済み)のメインロビーと同じ古代の切子玉(きりこだま)形首飾りを模した照明が温かな光を放つ。銅板張りのエレベーターや階段の手すりなどにも谷口の意匠を感じられる。

細かな凹凸が付けられた銅板張りのエレベーター

 同館は、改修工事のため6月中旬から休館する。村瀬さんは「和風モダンの美が継承されていくことを期待している」と話す。

格子の目隠しと石畳が調和する和風モダンな正面玄関

2023年2月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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