正面の半円形アーチや独特の意匠が目を引く講堂

 赤みを帯びた瓦ぶきの正門をくぐり、坂道を進むと優雅な学舎が現れる。周囲の自然環境に調和して建つ神戸女学院(兵庫県西宮市)のキャンパスだ。多くの名建築を残したウィリアム・メレル・ボーリズが設計した12棟が今も残る。建物の品格が生徒に積極的な影響を及ぼすというボーリズの設計思想の下、同学院は1933(昭和8)年に完成した。

総務館1階の玄関ホールの階段。見上げると阪神大震災でも割れなかった乳白色のステンドグラスがある

 キャンパスのほぼ中央に位置するスパニッシュミッション様式でクリーム色の建物が総務館で、内廊下で講堂と礼拝堂とつながっており、三つの機能を備えた一つの建物となっている。講堂は舞台と座席を区切る半円形のアーチが印象的で、重厚感のある空間が広がる。礼拝堂の窓は琥珀(こはく)色のガラスが使用され、差し込む光で内部が黄金色に包まれる。「美しい心を育むための品格ある建築」。その実現を目指したボーリズ建築の精神が表れているようだ。

礼拝堂の北面にはボーリズがデザインした7本のロウソクのステンドグラスがある

 キャンパス内の建築一般公開は年に数回、不定期で行われ、研修を受けた学生が「ツアー・マイスター」として建物の魅力を解説する。

総務館の外観。1階に総務課と経理課、2階には院長室などがある

2023年2月5日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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