のどかな風景の中にある建物

 広々とした盛岡城跡公園(盛岡市)を散策していると、個性的な外観の「もりおか歴史文化館」が目に入った。建築家、菊竹清訓(きよのり)が手掛け、1967(昭和42)年に完成した旧岩手県立図書館が前身だ。図書館の移転を受け、2011(平成23)年に盛岡の歴史、文化などの資料を保存、公開する現施設にリニューアルされた。建物は増改築しているが、外観の大部分は完成当時の姿を伝えている。

図書館当時は公開書架室だった休憩ラウンジの窓。景色を大きく建物に取り入れている

 屋根の造形は山容の片側が富士山のような、なだらかな形状を持つことから「南部片富士」として地元に親しまれている岩手山の姿を生かした。建物正面や横から屋根を見るとりりしい姿が分かる。彫刻家、舟越保武が制作した棟飾り「ふたば」は伸びゆく岩手の文化を象徴している。

南部片富士として親しまれている岩手山をイメージした屋根。中央上が棟飾り

 建物の高さは低く抑えられており、周囲の自然に溶け込んでいる。屋根の窓は、展示品の保護などのために塞がれているが、吹き抜けの空間構成が見て取れる。南部氏が治めた盛岡藩の城下町の歴史や文化に触れていると、いつの間にか心が落ち着いてきた。

文化財保護などのため、屋根の窓は塞がれている

2023年1月8日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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