折板構造の屋根が特徴的な九州工業大の記念講堂

 格子模様の壁の上にギザギザした形のひさしが突き出している。屋根や背面の壁は、びょうぶ状に折り曲げたような折板(せっぱん)構造で強度を持たせている。屋根を上から見ると広げた扇状だ。九州工業大記念講堂(北九州市戸畑区)は、建築家の清家清が設計し、1960(昭和35)年に完成した。

講堂の天井に折板構造の屋根がうかがえる

 同大は、炭鉱事業で成功し、麻生、貝島と並び「筑豊御三家」と呼ばれる安川敬一郎の手によって09(明治42)年、私学「明治専門学校」として開校した。記念講堂で行われた開学五十周年記念祝賀会では「世界3大ピアノブランド」の一つと呼ばれるベーゼンドルファー製のピアノを、世界的に活躍したピアニスト、安川加寿子が演奏し、盛大に開催されたという。

講堂の南壁にある窓にはめられたガラスから、外がぼんやり見える

 記念講堂は斜面を利用して建てられ、入り口よりもかなり下の位置にステージがある。外観からは分かりにくく、不思議な感覚にとらわれる。もうすぐ吹奏楽部が練習を始めるという講堂内には、南壁面のアートガラスから優しい光が差し込んでいた。

仰ぎ見ると折板構造の鋭角部分が際立つ

2022年11月27日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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