尾根の先端にそびえ建つ記念塔

 淡路島南端の、瀬戸内海を見下ろす大見(おおみ)山(兵庫県南あわじ市)に、太平洋戦争で軍需工場に動員され亡くなった学徒たちを追悼する施設がある。丹下健三が「戦没学徒記念若人の広場」として設計し、1967(昭和42)年に完成した。しかし、完成式に戦時中指導的な立場にあった政治家や、自衛隊が参加することを知った丹下は、政治利用されるのを嫌い、式典には参加せず、建築雑誌にも発表しなかった。そのため、長らく知られざる丹下作品となっていた。

アーチ形の天井が連なる展示資料館

 尾根の形状を生かした建物の配置が特徴的だ。さび色の御影(みかげ)石が積まれた壁面の建物は屋上全体を広場とした。内部はコンクリート打ち放しのアーチ形天井が連続し、展示資料館とホールになっている。尾根筋に沿って掘り込んだ通路を抜けた先端には、高さ25㍍の記念塔がそびえ建つ。塔の下には「永遠の灯(ともしび)」が燃え続けている。

コンクリート打ち放しで曲線美が印象的な記念塔(内側から撮影、下中央が「永遠の灯」)

 阪神大震災で被災して長い間閉鎖されていたが、同市が復元改修し、2015年に「若人の広場公園」として再開した。

さび色の御影石で覆われた壁とアプローチ

2022年11月13日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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