松尾芭蕉の旅姿を表現した俳聖殿

 三重県伊賀市の中心部、上野公園にあるキノコのような愛らしいデザインの建物が俳聖殿だ。

 旧伊賀国出身の俳人・松尾芭蕉(1644~94年)の生誕300年を記念し、地元出身の政治家・川崎克が私財を投じて建設した。彼の構想を元に島田仙之助が設計し、建築学者の伊東忠太の指導で1942(昭和17)年に完成。高さ17・57㍍の木造2層建てで、八角形平面の1層に円形平面の2層を載せた八角重層塔の近代和風建築だ。

俳聖殿内には、円形2段の土台と伊賀焼の陶板が張られた八角形の基壇の上に厨子が載る

 曲線が美しい屋根やひさしは、ヒノキの樹皮を用いて施工される伝統手法の「檜皮葺(ひわだぶき)」。芭蕉の旅姿をイメージし、上層の屋根は「旅がさ」、下層のひさしは「蓑(みの)と衣」、回廊の円柱は「脚絆(きゃはん)と杖(つえ)」を表しているという。許可を得て内部に入ると、中心には八角の厨子(ずし)があり、天井には厨子を守るように垂木(たるき)が放射状に組まれていた。

放射状に配置される俳聖殿内の垂木

 厨子内には高さ約105㌢の伊賀焼の芭蕉座像が安置され、毎年10月12日の芭蕉の命日に開催する「芭蕉祭」で一般公開される。

厨子に安置される伊賀焼の芭蕉座像

2022年10月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする