ポトスのつるが垂れ下がり緑に囲まれた吹き抜け

 ロビーに入ると、目の前の海から風が吹き抜けていく。ホテルムーンビーチ(沖縄県恩納村)は、本土復帰から間もない1975(昭和50)年、沖縄国際海洋博覧会に合わせて開業。沖縄のリゾートホテルの先駆けとなった。

シンプルな造りの階段と手すり

 建築家の国場幸房氏が「風土に合った建物を造りたい」と、石垣島の「千本足ガジュマル」の木陰をイメージし設計。吹き抜けや、壁のないピロティなど、開放的な空間が大部分を占める。部屋数は減るが、来館者がくつろげるよう「無駄」や「遊び」を大切にしたという。建物はヤシの木やガジュマルなどに囲まれ、内部の吹き抜けは天井近くから伸びるポトスのつるが緑に彩る。ホテル独自の「造園課」が管理し、台風や塩害から守りながら、植物と建物が融和する沖縄らしい空間を作り出してきた。

木陰をイメージして造られたピロティ。かつては窓ガラスもなく、来館者がゴザを敷いてくつろいだり、三線(さんしん)を弾いて歌ったりしていたという

 開業から50年近くたち、沖縄には数多くのホテルが建った。それでも「この雰囲気が好きで何度も来てくれるリピーターは多い」と開業時から勤める喜納進さん(75)は語る。その独自性は今も色あせていない。

ビーチを囲むように建てられたホテルムーンビーチ

2022年09月25日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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