柱のない営業フロア。2階には回廊がめぐらされている。手前の赤いものは歴史展示パネル(回廊への立ち入り許可を得て撮影)

 数多くの銀行が建てられた北海道小樽市は、「北のウォール街」と呼ばれ、明治・大正期の近代化によって繁栄した。当時の面影を今に残す日本銀行旧小樽支店は、日本銀行本店や東京駅を設計した辰野金吾とその弟子らが携わり、1912(明治45)年に完成した。

営業フロアの窓口カウンター内


 レンガ造り2階建ての建物外観はルネサンス様式を取り入れ、屋根には五つのドームを配置し、外壁はレンガの表面にモルタルを塗って石造り風に仕上げている。

建物の外壁に18体、内壁に12体あるアイヌの守り神シマフクロウをモチーフにしたとされる塑像


 正面玄関から入ってすぐのロビーや営業フロアは、外光と照明に照らされる開放的な吹き抜けが印象的だ。当時のままの装飾が残る天井までの高さは床から約10・5メートル。屋根をレンガの壁から鉄骨を組んで支える構造にすることで、柱のない空間を実現させた。
 2002年9月、日銀小樽支店が廃止となり、支店の建物は03年5月から金融資料館として日本銀行の歴史や金融の仕組みを学べる施設として公開されている。無料で見学できる(水曜と年末年始は休館)。

ルネサンス様式の外観を今に残す建物

2022年9月18日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする