閑静な住宅街にたたずむ白鶴美術館の本館

 川沿いの急な坂道を上っていくと、青銅ぶきの屋根で寺院のような建物が見えてくる。大阪湾を望む六甲の高台にある独特な近代建築は、白鶴美術館本館(神戸市東灘区)だ。

 白鶴酒造7代、嘉納治兵衛の手によって1934(昭和9)年に開館した。私立美術館の先駆けとも言え、竹中工務店が設計を担い、国の登録有形文化財となっている。

1階展示室の折り上げ格天井

 東洋の古美術を中心に国宝・重要文化財を含む約1400点を所蔵。1階の展示室では、城郭建築に代表され、格式高い造りとなる折り上げ格天井(ごうてんじょう)が見られる。照明器具やくぎ隠しなどには鶴の意匠が施されている。

 また、大きな窓からの自然光を感じながら館内でのひとときを過ごせるのも魅力の一つだ。

本館1階展示室そばにある廊下の窓からは緑の木々が見える

 中庭には住吉川上流から流れ込む滝や池があり、中央にある八角灯籠(とうろう)は奈良・東大寺大仏殿前の灯籠から直接型を取って造られた。

 毎年春と秋の2回公開しており、次回秋季展は9月23日~12月11日。

事務棟から本館へと続く渡り廊下には鶴の意匠が施された照明が来館者を迎える

2022年8月28日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする