聖堂内に足を踏み入れると静ひつな空間が広がっていた。カトリック目黒教会(東京都品川区)は1956(昭和31)年に献堂式が行われた。日本の教会を多く手掛けた建築家、アントニン・レーモンドの傑作の一つと言われる。多くの人々が行き交う目黒駅の近くだが、外部のにぎわいは聞こえてこない。
側壁、天井にびょうぶを折り曲げたような折板構造を用いており、デザイン的に美しい調和をもたらしているのと同時に、耐震性に優れている。折板のスリットからの日差しが優しく祭壇を照らす。
アントニオ・カマチョ・ムニョス主任司祭(58)によると、翼を広げたような形の天蓋(てんがい)は聖霊のシンボルで、火を意味する金色に輝く。交錯する円は、キリスト教で重視される教義の一つである、父(創造主としての神)と子(キリスト)と聖霊の「三位一体」を表しているという。
カマチョ主任司祭は「人々の安らぎのために教会はあります」と話す。ミサの時間以外は基本的に見学は可能だ。救いの場は人々に門を開いている。
2022年7月3日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載