レストラン棟へとつながる渡り廊下。三角形の支柱(左)と波をモチーフにした椅子が連なる

 心地よい風が奏でる葉音に包まれながら歩いていると、独創的なフォルムの建物に出合った。世田谷美術館(東京都世田谷区)は、砧公園の緑の中にある。鉄筋コンクリート造りの地上2階、地下1階。建築家の内井昭蔵氏が手掛け、1985(昭和60)年に完成した。

波紋をイメージするエントランスホールの階段

 基本構造には、円、三角、四角の形状が生かされている。エントランスホールは吹き抜けで、ガラス天井が緩やかな曲線を描いている。ホールの階段は波紋をイメージし、静寂な空間に動きを表現しているという。

 レストラン棟へとつながる渡り廊下は、さまざまなデザインを楽しめる空間だ。屋外には三角形を取り入れた柱が連続。内部の壁沿いには波をモチーフにした椅子が連なるように置かれ、柱や公園の風景を眺めながら、落ち着いた時間を過ごせそうだ。

屋根など曲線を多用した美術館。中央は中庭をまたぐブリッジ

 外壁は、四角い「穴あき」と平面のタイルで覆われ、単調になりがちな壁面に変化を与えている。美術鑑賞だけではなく、建築美も堪能できる「公園美術館」だ。

2022年5月15日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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