大宜味村役場旧庁舎の2階にある八角形の村長室

 青い海と常緑の森に囲まれた沖縄本島北部の小さな集落に、白が映える大宜味村役場旧庁舎(沖縄県大宜味村)がある。1925(大正14)年の完成で、2017年に国の重要文化財に指定された。太平洋戦争末期に激しい地上戦があった沖縄では、戦前から残る貴重な建築物だ。

 設計は熊本出身の建築技手、清村勉。木造が主流だった沖縄の家屋が台風やシロアリによる深刻な被害を受けていたことなどから、当時は珍しかった鉄筋コンクリート造りを採用した。

役場旧庁舎の正面玄関

 2階の村長室は、強風の影響を軽減するため八角形に造られた。海の見える村長室は、帰港する漁船や沖合の魚群を見つける展望台の役目もあったという。1階ロビーには五角形の柱が立ち並び、天井のはりにはきめ細かい意匠が施されるなど、造形美へのこだわりもうかがえる。

 海と山に挟まれて耕作地の少ない同村は、戦前から「大宜味大工(いぎみぜーく)」と呼ばれる優秀な大工を数多く輩出してきた。まもなく「100歳」を迎える旧庁舎は、先人たちの確かな技術に支えられている。

八角形の村長室を支える1階中心部の柱群

2022年3月27日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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