元営業室は吹き抜けで開放感があり、当時の趣を楽しみながら食事ができるベーカリーレストランになった

 大阪・南船場の大通り、堺筋に面している堺筋俱楽部(大阪市中央区)は、左右対称の重厚な石造りの正面玄関と緻密な装飾が見事で大正ロマンを感じさせる。1931(昭和6)年、財閥が経営していた川崎貯蓄銀行の大阪支店として建てられた。鉄筋コンクリート造り地上4階建て、地下1階。設計は、銀行店舗の建築を多く手掛けた建築家の矢部又吉だ。

意匠を凝らした正面玄関周り

 同銀行が消滅した後も、他の地方銀行の店舗として使われた。改装して2001年からレストランが約20年間営業。21年11月からは1階でベーカリーレストランが営業を始めた。銀行時代に営業室として使われた1階フロアは高さが約10メートルある吹き抜けで、天井のはりには美しい装飾が施されている。当時の趣が残る、開放的な空間が料理に彩りを添える。銀行の象徴でもある頑丈な扉が守る金庫室は、ギャラリーなどとして活用するという。

金庫室はギャラリーに活用される

 90年余り変わらないその堂々とした姿は、変わりゆく大阪の街で今も風格を保っている。

2022年3月13日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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