アールデコ様式の装飾が施された横浜地方気象台の玄関ポーチ

 横浜港やベイブリッジが眼下に広がる観光名所、港の見える丘公園の近くに横浜地方気象台(横浜市中区)はある。海岸沿いにあった神奈川県測候所が関東大震災で倒壊したため、1927(昭和2)年に現在の高台に再建された。

 アールデコ様式の鉄筋コンクリート造りで地下1階、地上3階建て。当時は県の施設で、営繕管財課の繁野繁造(しげのしげぞう)が設計した。人造石洗い出しの外壁に縦横のラインを施したシンプルな外観で、装飾は玄関周りに集中する。

手すりの金属の装飾は復元された

 内部は板張りの床が温かみを感じさせる。梁(はり)や階段の手すり、照明の装飾など随所に曲線が用いられている。玄関ホールに据えられた時計は、創建時からあったと考えられているが、今は止まったままだ。2007年に大規模改修と増築、09年に耐震補強を終えた。

創建時からあったと推定される時計が据えられた玄関ホール

 稼働する気象台建築では3番目に古く、05年に市の有形文化財に指定された。内部の一部を見学者に開放していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止されている。

2022年2月20日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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