教会堂を思わせる落ち着いた内部。窓からは優しい光が差し込む

 旧波佐見町立中央小学校講堂兼公会堂(長崎県波佐見町)は1937(昭和12)年、建築家の清水玄治によって建てられた。木造平屋一部2階建ての洋館は、入学式や卒業式などで子どもたちの成長を見守り続け、地元の人々にも愛された。太平洋戦争中は、出征する兵士を戦地に送り出す場にもなった歴史がある。

窓に取り付けられたねじ込み式の鍵

 この建物の特徴は優れた音響効果だ。マイクがない時代に、壇上で話す声が後ろまで通りやすいようにと、清水は教会堂などを回って研究を重ねた。壇の下を掘って空洞にしたり、天井の材質を場所によって変えたりすることで優秀なホールを作り上げた。多くの音楽家が絶賛し、九州交響楽団も公演した。

張り出した三角屋根と窓の配置が特徴的な外観

 老朽化や土地区画整理事業の影響で97年に取り壊しの危機を迎えた。だが、住民らが保存活動を展開し、作曲家の千住明さんら音楽関係者も運動を後押しした結果、存続が決まった。

 2010年に国の登録有形文化財に登録された昭和初期の木造洋館は、週末などにイベント会場に活用されている。

2階は会議室に使用されている

2021年12月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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