開放感のある2層吹き抜けの主室

 三岸(みぎし)家住宅アトリエ(東京都中野区)は、閑静な住宅街の中にある。大きな四角い箱のようなデザインが目を引く。31歳という若さでこの世を去った洋画家、三岸好太郎と、妻で女性洋画家の先駆けとして活躍した節子(94歳で死去)のアトリエとして、1934(昭和9)年に完成した。

 世界の建築界にも影響を与えた、ドイツの芸術学校「バウハウス」に学んだ山脇巌が設計した木造2階建て。南東面には全面ガラス窓を設け、陽光が惜しみなく降り注ぐ。内部の主室は2層吹き抜けで、弧を描く姿が美しいらせん階段を上ると2階の和室につながる。

趣のある旧玄関

 装飾を排し、コンクリートや鉄などを使用したモダニズム建築の中で、木造の建築は貴重だ。だが、好太郎は病に倒れ、完成したアトリエの姿を見ることはなかった。

 2014年に国の登録有形文化財となった。レンタルスタジオとしても運営され、収益は維持修復費などに活用されている。見学も可能で、公式サイトで申し込む。

主室と隣接する1階洋室

2021年12月5日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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