ホールの天窓。修復された色ガラスはわずかに濃度が異なる

【レトロの美】甲府法人会館 甲府市天窓から柔らかな光

文:須賀川理(毎日新聞記者)

建築

 甲府市の中心部にある甲府法人会館は、山梨県内に現存する最古の鉄筋コンクリート造りの建物だ。玉砂利の洗い出し工法で化粧された外壁、柱形が連続するいかめしい建物は1926(大正15)年、甲府商工会議所として完成した。

 地元で建築会社を率いた内藤半二郎が設計、施工に当たった。関東大震災の経験を踏まえた堅固な建物は、現在もマグニチュード8・5の地震に耐えられるという。多くの部屋で2方向以上に避難ができる構造になっており、防災意識の高さがうかがえる。

美しい曲線を描く3階廊下の手すり

 3階のホールには一辺が約5㍍の天窓があり、大空間の中央部に柔らかな光を取り込む。天窓の色ガラスは修復された一部を除き、当時使われたガラスが現存する。

 長い歴史の中で用途に応じて改修が加えられてきたが、90年の老朽化に伴う改修の際、建築家、清家清の指導を得て、可能な限り建築当時の姿に復元された。96年に国の登録有形文化財に指定されている。見学は可能で、甲府法人会に申し込む。

上部が斜めにカットされた両端のドアが印象的なエントランス

2021年11月28日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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