木造2階建ての酒造蔵。濃淡を際立たせた配色の窓が美しい

【レトロの美】帆足本家 大分市栄華伝える白壁と窓

文:金澤稔(毎日新聞記者)

建築

 庄屋を務める傍ら酒造業を営んでいた帆足本家(大分市中戸次(なかへつぎ))は、街道沿いで栄えた旧家の面影を色濃く残している。白壁に並ぶ窓が美しい酒造蔵は、1880(明治13)年着工の記録が残る。杜氏(とうじ)が住み込んでいた部屋、水をくみ上げていた井戸などは当時のまま。一方、酒の仕込みを行っていた1階の広い空間は、フリースペースに生まれ変わった。

酒を造るための水をくんでいた井戸(中央)

 母屋は65(慶応元)年に、大分県を中心に神社や仏閣を多く手掛けた名工、高橋団内が建てた。「富春館(ふしゅんかん)」と呼ばれ、江戸後期の儒学者、頼山陽(らいさんよう)によって命名された。文人墨客を迎え入れたサロンでもあり、南画家、田能村竹田(たのむらちくでん)も出入りし、多くの絵を描いた。現在はギャラリーとして開放され、柱には、百姓一揆の時に付けられた刀傷(修復済み)があり、歴史の生々しさを感じることができる。

「富春館」玄関の西側に建つ中門。門柱には阿吽(あうん)の彫像がにらみをきかす

 約6600平方㍍の広大な敷地に建つ江戸、明治、大正といった時代の特徴が残る建物は、2006年に国の登録有形文化財に登録された。

2021年11月21日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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