見事な透かし彫りがぐるりと囲む欄間がある脱衣所

【レトロの美】
船岡温泉 京都市北区
透かし彫りがぐるり

文:大西達也(毎日新聞記者)

建築

 京都西陣・船岡山の近くにある船岡温泉(京都市北区)の玄関は、社殿のような唐破風(からはふ)で堂々としている。この温泉は、1923(大正12)年に木造2階建ての料理旅館「船岡楼」の付属浴場として建設された。

社殿のような唐破風の玄関

 温泉が出なかった京都で「温泉」としての許可を取るため、33(昭和8)年に日本で初めて電気風呂を導入。「特殊船岡温泉」として許可を受けた。戦後間もなく、本格的な銭湯として営業を始めた。

 2003(平成15)年、浴室と脱衣所は国の登録有形文化財に。脱衣所をぐるりと囲む欄間には、京都三大祭りの一つ、葵祭の行列などが透かし彫りで表現されている。天井の彫刻は、鞍馬てんぐが牛若丸に剣術を教えている場面だ。脱衣所と浴室を結ぶ渡り廊下の壁は、色鮮やかなマジョリカタイルが施されている。

 改築された浴室は、日替わりで男女が入れ替わる。電気風呂のほか、薬湯、露天風呂など種類が豊富で、天然温泉でなくとも大正、昭和の趣に浸りながら体を温められる。

色鮮やかなマジョリカタイルが美しい脱衣所と浴室を結ぶ通路

2021年11月14日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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