
愛知・三河地方の美しい渓谷を流れる黄柳(つげ)川に、「旧黄柳橋」(新城市)と呼ばれるアーチ橋が架けられている。主桁(道路面)とアーチ部が広く離れている珍しいデザインで、二重の橋のようにも見える。

鉄筋コンクリート製の旧黄柳橋は、主桁とアーチ部の間に空間があるオープンアーチ橋で、1918(大正7)年に県の土木技師の設計で架設された。アーチスパン(橋の支点と支点の距離)は30・3メートルで、当時の技術水準では限界だったといい、全国一の規模を誇った。主桁の長さは51・2メートル。アーチ上から主桁を支える柱は高さが4・4~8・2メートルあり、耐震性と安全性を高めるため井桁状の構造になっている。その姿は、木組みの和風建築を思わせる。

交通量の増加に伴い、94(平成6)年に現在の黄柳橋が完成し、旧黄柳橋は道路橋としての役目を終えた。98年には文化財的価値が認められ、国の登録有形文化財になった。現在は歩行者用の橋として利用されている。
2021年10月10日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載