朱塗りの装飾が映える武雄温泉楼門

 竜宮城を思わせる「武雄温泉楼門」(佐賀県武雄市)は、建物はくぎを一本も使わずに1915(大正4)年に建設された。楼門奥の「武雄温泉新館」とともに東京駅や日本銀行本店などを手がけた辰野金吾が設計した数少ない和風建築で、温泉のシンボルとして親しまれている。

武雄温泉新館の窓から見た楼門。竜宮城を訪れたような気分になる

 楼門2階の天井には子(ね)・卯(う)・午(うま)・酉(とり)の彫り絵があり、東京駅で発見された八つのえとと呼応するのではないかと騒がれたが、管理する「武雄温泉株式会社」常務の大宅賢二さんは「残っている青図には3棟の楼門が描かれている。3棟そろって十二支が完成する予定だったのではないか」と推測する。

武雄温泉楼門の天井板にある「卯」の彫り絵
「マジョリカタイル」と呼ばれる美しい装飾タイルが敷かれた新館の浴室

 公衆浴場としてにぎわっていた新館は、杵島炭鉱の閉山や家庭風呂の普及による利用者減と老朽化のため73年に閉鎖された。2003年に創建時の姿に修復され、マジョリカタイルと呼ばれる色鮮やかな装飾タイルを使った浴室や、大正天皇のために造られたとされる浴室などを見ることができる。楼門と新館は05年に国の重要文化財に指定された。

2021年9月26日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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