大学セミナーハウス本館の窓は、外に向かって傾斜し、広がりをもたらしている

 多摩丘陵の緑に包まれた大学セミナーハウス(東京都八王子市)の建物群は、世界的な建築家、ル・コルビュジエに学んだ吉阪隆正と彼が設立したU研究室の代表作だ。国公立や私立大学が垣根を越えて交流できる宿泊研修施設を、と1965(昭和40)年に開設した。

他に類を見ない形状の本館。左上は丘と4階をつなぐブリッジ

 本館(地上4階、地下1階)は、逆ピラミッド形の奇抜な造形で訪れた人々を驚かす。構造は「大地に知の楔(くさび)」をとのシンボルだ。U研究室で吉阪に教えを受けた建築家の齊藤祐子さん(67)は「皆で模型を見ながら納得するまで話し合い、建物のデザインを作り上げた。ある時、所員の一人がピラミッド形の模型を逆さまに置き、本館の骨格が固まった」と振り返る。外観以外も特殊で、北側上部には訪問者を出迎える「目」が。4階の多目的ホールの照明はリズミカルに配置され、遊び心を感じさせる。

セミナーハウスの訪問者を出迎える「目」。凝視すると建物が生きているように感じる
4階の多目的ホール天井の照明。リズム感のある配置が目を引く

 約7㌶の敷地にはセミナー室や宿泊棟などが点在する。開設から20年をかけて造られ、今に至る。時が流れ、建物群は味わいを深めていく。

2021年9月19日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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