目黒区総合庁舎(東京都目黒区) 縦格子の外観が時代を超えて異彩を放つ

 東急東横線・東京メトロ日比谷線中目黒駅から5分ほど歩くと、目黒区総合庁舎(東京都目黒区)が姿を現す。建築家、村野藤吾の代表作の一つで、1966(昭和41)年に千代田生命保険相互会社の本社ビルとして完成した。2000年の同保険の経営破綻後、目黒区に売却され、03年から総合庁舎として業務を開始した。

目黒区総合庁舎(東京都目黒区) 西日が差し込む2階渡り廊下

 庁舎は本館、別館からなる。両館をつなぐ渡り廊下の2階の壁には縦長のガラスブロックがはめ込まれ、差し込む光に露出を合わせて撮影すると光が豊かな表情を見せた。渡るのに十数歩の空間は、空港の搭乗ブリッジを思わせる。

目黒区総合庁舎(東京都目黒区) 縦格子沿いに光が差し込む1階部分

 本館、別館の外観はアルミ鋳物の縦格子で覆われたバルコニーが設けられ、異彩を放つ。日差しは、縦格子とバルコニーに吸収され、室内に優しい光をもたらす。中庭の池の水面に映り、時折揺らぐ庁舎の外観は幻想的だ。

 高層ビルが時代の象徴となった高度経済成長期であり、ビートルズが来日した年に誕生した建物は、区民の生活を支える場として時を刻み続けている。

2021年3月7日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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