展示室から見上げた天井は深い穴に吸い込まれるような錯覚を覚えた

 旧佐賀城の三の丸跡に巨大な宇宙船が着陸したかのようだ。近未来の建物をイメージさせる佐賀県立博物館(佐賀市)は、1970(昭和45)年に、明治維新から100年を記念して建てられた。3階建ての鉄筋コンクリート造りで、吉野ケ里遺跡の出土品などを展示している。

 建築家の内田祥哉(よしちか)と高橋靗一(ていいち)らは、あらかじめ展示品を確認して、どこに展示するかを考えて建物のイメージを膨らませた。

細く突き出した階段部分(中央)と広がる展示室を外から見ると巨大な宇宙船のようだ

 外観の形状、階段の配置、天井などは十字形をベースに設計。さらに2㍍四方のコンクリートを基本単位(グリッド)として、このグリッドを多数連結していく工法を採用した。

 十字形に延びる階段で仕切られた部分が展示室になっており、各展示室に自由にアプローチすることができるようになっている。

階段最奥部に展示された仏像が間接的な自然光にほんのりと照らされる

 1階からの階段を上っていくと洞窟の中にいるように感じた。最上部には、ほのかに外光が注ぐ一角があり、仏像が厳かにたたずんでいた。常設展示は無料なので毎日のように訪れ、この仏像を拝む来館者もいるという。

2024年3月3日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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