柱と柱の間隔を長くし広い空間を生み出した集会室
柱と柱の間隔を長くし広い空間を生み出した集会室

 周囲と隔絶するようにそそり立つコンクリートの壁が敷地境界を縁取る。

 墨会館・小信中島(このぶなかしま)公民館(愛知県一宮市)は、染色整理加工業「艶金(つやきん)興業」の本社事務所「墨会館」として、世界的な建築家・丹下健三の設計により1957(昭和32)年に完成。2008(平成20)年に国の登録有形文化財に指定された。10年に一宮市が購入し、本社事務所棟1階を小信中島公民館、本社集会室棟を尾西生涯学習センター墨会館として整備し、地域のランドマークとして再利用している。

周囲をぐるりと巡る外壁が特徴的な墨会館
周囲をぐるりと巡る外壁が特徴的な墨会館

 周囲に巡らす壁は、周辺の工場や道路の騒音対策として設けた。事務所棟と集会室棟をつなぐ広いピロティ空間の玄関車寄せが利用者を出迎える。中庭から空が広がり、外観からは想像できないほど開放的だ。垂木風の軒裏や雪見障子風のサッシなど、随所に和モダンな意匠がちりばめられ、初期の丹下作品が堪能できる。

ピロティ空間の格子状の壁が構成美にアクセントを与えている
ピロティ空間の格子状の壁が構成美にアクセントを与えている

 一般公開されていないエリアは、月1回開催するボランティアによるガイド(事前申し込みが必要)で見学することができる。

2024年2月18日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする