ドーム状の銅製灯籠(とうろう)。150年余もの間灯火を守ってきた

 円筒の内部の狭い階段を上りきると、水平線まで視界が開けた。ハリ板(灯室を覆うガラス板)越しに瀬戸内海を行き交う船がよく見える。

 石造りでずんぐりとした姿の部埼(へさき)灯台(北九州市門司区)は、江戸幕府と英国公使との間で結ばれた大阪条約により1872(明治5)年に石油灯で初点灯された。「日本の灯台の父」と呼ばれる英国スコットランド出身の技師、リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計した。

多数のガラスで構成され真っすぐ遠くまで光を届けるフレネルレンズ

 光を遠くまで届けるために開発された「フレネルレンズ」は仏製で、80枚を超えるガラスを組み合わせている。回転式への変更に伴い、95(明治28)年に設置されたレンズだ。

 36(天保7)年、僧の清虚(せいきょ)が暗礁が多く海難事故の続くこの場所で、船の道しるべにと、たいまつをたき始めた。死後は村人が灯をともし続け、時を経て部埼灯台に引き継がれた。

瀬戸内海を見渡す小高い岬に建つ

 海の安全を守ってきた灯台は、2020年に国の重要文化財に指定された。

2024年2月4日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする