庭の紅葉に白壁が映える旧松本家住宅
庭の紅葉に白壁が映える旧松本家住宅

 夜宮公園の一角で、木造の洋館「旧松本家住宅」(北九州市戸畑区)が木々に溶け込んでいるかのようだ。ハーフティンバー様式と呼ばれる技法で造られ、柱やはりが外壁に露出した姿が美しい。1912(明治45)年、石炭業で成功し、明治専門学校(現九州工業大)の創立者の一人、松本健次郎が自宅と迎賓館を兼ねて建てた。設計は辰野金吾が担当した。

直線と曲線の組み合わせが美しい
直線と曲線の組み合わせが美しい

 紅葉した築山から外観を見ると、切り妻や寄せ棟など多様な屋根で構成され、柱の間の白壁と相まって和の装いを感じる。貴賓室の壁は、緩やかな弧を描くように張り出している。直線的に張り出した子ども部屋との違いに遊び心が表れているようだ。

食堂の壁に作り付けられた食器棚
食堂の壁に作り付けられた食器棚

 広間の列柱をつなぐアーチ形の楣(まぐさ)、食堂の作り付け食器棚、14カ所にある暖炉の装飾などには曲線の美を生かす芸術様式、アールヌーボーが取り入れられた。照明は建築当時のままだ。

 結婚披露宴や演奏会などで利用されている。72(昭和47)年、隣接する日本館と共に国の重要文化財に指定された。

2023年12月3日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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