大きく突き出た2本の直方体が目を引く北九州市立美術館の本館
大きく突き出た2本の直方体が目を引く北九州市立美術館の本館

 緑が豊かな丘の上に、巨大な2本の直方体が突き出した不思議な形状だ。その姿から北九州市立美術館(同市戸畑区)は「丘の上の双眼鏡」の愛称で親しまれている。同市が重工業からの転換を図っていた1974(昭和49)年、建築家の磯崎新によって建てられた。西日本の公立美術館の先駆けと位置付けられている。

エントランスから展示室へとつながる階段。神殿の入り口のようだ
エントランスから展示室へとつながる階段。神殿の入り口のようだ

 入館すると、天井から自然光が降り注ぐエントランスを2本の直方体が貫いていることが分かる。この直方体の内部は展示室だ。本館とアネックス(別館)をつなぐ渡り廊下はガラス張りで、周辺の自然や街並みを見渡せる。

正方形が格子状に重なる玄関からは戸畑の街並みを見下ろすことができる
正方形が格子状に重なる玄関からは戸畑の街並みを見下ろすことができる

 アネックスに入ると、中世ヨーロッパの中庭のようなアトリウムに水が張られていた。列柱や壁に揺らめく光の中で展示作品を思い返した。

丘の上に建つ美術館に上る階段
丘の上に建つ美術館に上る階段

 磯崎は他にも「北九州市立中央図書館」(74年)、「西日本総合展示場」(77年)といった公共的な施設を手掛けた。90年に北九州国際会議場を完成させた後、この街が生産から消費都市へと移行したと感じたと著書の中で述べている。

2023年9月24日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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