中央に垂れ下がるように湾曲した屋根が特徴的な外観
中央に垂れ下がるように湾曲した屋根が特徴的な外観

 体育館といえば、かまぼこ形やドーム形など丸く膨らんだ屋根を想像する。「蒲郡市民体育センター体育館」(愛知県蒲郡市)は、外側から中央に垂れ下がるように湾曲した屋根を、斜めに大きく張り出した柱が両側から力強く引っ張っているような外観でとても個性的だ。

改修工事で貼った遮光フィルムでブルーに見えるガラス窓もあるが、内壁の全周にある窓の効果で宙に浮いたように見える競技場の天井
改修工事で貼った遮光フィルムでブルーに見えるガラス窓もあるが、内壁の全周にある窓の効果で宙に浮いたように見える競技場の天井

 「開放的な空間に『1枚の垂れ下がった屋根があるのみ』という、市民のための快適な運動環境を実現」。このコンセプトで石本建築事務所(東京)が設計し、1968(昭和43)年に完成した。片側7本の列柱が鉄骨屋根をつり下げるつり屋根構造が特徴。競技場内から天井を見上げると、内壁の全周にあるガラス窓の効果で屋根が宙に浮いているように見える。スタンドの観客席は前後にゆとりを持たせて配置され、競技場全体を見渡すことができる。

1階ロビーの柱に設置される木製ベンチ
1階ロビーの柱に設置される木製ベンチ

 耐震性不足の判明で一時は、移転、建て替えの計画が進んだが、市議会の反対もあり方針転換した。2021年に同事務所が耐震改修工事を完了。市民に愛される体育館は、デザインとコンセプトを変えることなく生まれ変わった。

玄関ホールで来場者を出迎える彫刻家・喜代志松治(きよし・まつじ)作の陶板のレリーフ
玄関ホールで来場者を出迎える彫刻家・喜代志松治(きよし・まつじ)作の陶板のレリーフ

2023年9月10日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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