手すりに大理石が使われ精巧な彫刻で飾られた大階段

 京都御所の西に位置するレンガ造りの京都府庁旧本館(京都市上京区)は、1904(明治37)年に完成した。71(昭和46)年まで京都府庁の本館として使われ、現在も執務室や会議室として利用されている。創建時の姿をとどめる現役の官公庁建物としては日本最古とされ、国の重要文化財に指定されている。

レンガ造りの京都府庁旧本館。三角形のペディメントを構える大屋根を中心に、左右両翼に対称に張り出した形だ

 ルネサンス様式の建物外観は、正面中央の大屋根を中心に、左右両翼に対称に張り出す。玄関を入り奥へ進むと、大理石をふんだんに使用した大階段が出迎える。設計は京都府技師の松室重光が担い、議事堂を一体化した府県庁舎として、以降の模範とされた。正庁に用いられた折り上げ小組格天井(ごうてんじょう)など、日本建築の手法も随所に見られる。

アーチ形の柱が並ぶ1階通路

 ロの字形の建物に囲まれた中庭は、平安神宮神苑(しんえん)などを手掛けた7代目小川治兵衛が設計。「祇園しだれ桜」など貴重な桜が花を咲かせる春には毎年「観桜祭」が開かれている。館内は見学可能で、7月末には1階に新たにカフェも開店。時を超えて府民に親しまれている。

曲線のフォルムや装飾の美しい旧議場。2階は傍聴席となっている

2023年9月3日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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