大学の東門を入ると目に留まる印象的な外観

 手入れが行き届いた芝生の中で、ルーテル学院大学チャペル(東京都三鷹市)のユニークな形状が際立つ。建築家、村野藤吾が手掛けたチャペルは1969(昭和44)年に完成した。

 鉄筋コンクリート造りの2階建てで、垂直ラインを生かしているのが特徴だ。外観は基礎部が見えず、壁と同じ素材が地面まで続いている。その様は大地と融合し、この地に根付いているかのようだ。

祭壇から角が取れた窓枠の入り口(中央下)をのぞむ

 礼拝堂の祭壇脇には、和風建築で見られる「地窓(じまど)」が床面から伸びている。十字架を見上げる上への視線と、地窓から庭を見つめる下への視線が、内部の空間に広がりをもたらしている。祭壇の聖卓は大理石で、粗い溝の文様を施されている。祭壇右手にある懺悔(ざんげ)室、礼拝堂後方の洗礼室はそれぞれ円筒状で、入り込む光を緩やかに反照させる。

祭壇脇の窓。外とフラットにつながる

 村野は本館、図書館、寮棟も手掛けた。異なる機能を持つ建物を同大のキャンパス内に分散して配置させたが、周辺を散策すると、全体の統一化が図られていることが伝わってきた。

外観は見る角度で表情を変える

2023年8月27日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

シェアする