赤と白のブロックを交互に積んだ柱が幾つも建ち並び、一部の屋根がブーゲンビリアに覆われた名護市庁舎(沖縄県名護市)は、役場とは思えない独特の外観だ。象設計集団とアトリエ・モビルが設計し、1981年に完成した。
沖縄本島北部の各地域にある「神アサギ」と呼ばれる祭祀(さいし)用の小屋をモチーフにした。鉄筋コンクリート造り3階建てで、各階の「アサギテラス」と呼ばれる軒下のような空間が、沖縄の強烈な日差しを遮る。テラスは休日や夜間も含めて常時利用でき、住民たちの憩いの場になっている。
庁舎内も仕切りの少ない開放的な造りで、2000年ごろに空調設備が設置されるまでは、すぐそばの海からの風を通風口や天井ダクトなどで取り込み、暑さを和らげていた。
築40年以上になる庁舎は潮風にさらされて老朽化が進む。耐震化など大規模な改修には多額の予算が必要になる見込みで、建て替えも含めた検討が始まっているが、保存を求める声も上がっている。
2023年7月23日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載