大きく張り出したひさしが特徴的なとこなめ陶の森の陶芸研究所本館(旧常滑市立陶芸研究所本館)
大きく張り出したひさしが特徴的なとこなめ陶の森の陶芸研究所本館(旧常滑市立陶芸研究所本館)

 とこなめ陶の森(愛知県常滑市)に建つ陶芸研究所本館(旧常滑市立陶芸研究所本館)の外観は、約350万枚のモザイクタイルで紫のグラデーションを表現した。大きく張り出した屋根のひさしやテラス、露出する柱やはりに日本建築的な要素が見られる。

明かりの前部を六角形のメッシュで覆ったカラフルな玄関ホールの天井照明
明かりの前部を六角形のメッシュで覆ったカラフルな玄関ホールの天井照明

 伊奈製陶(現LIXIL)の創業者で初代常滑市長の伊奈長三郎が、常滑焼の研究と人材育成のために自社株を市に寄付し、その資金で1961(昭和36)年に建てられた。

堀口が桂離宮をオマージュして作った2階和室前の月見台
堀口が桂離宮をオマージュして作った2階和室前の月見台

 地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート造り。日本の近代建築を代表する建築家で茶室の研究家として知られる堀口捨己(すてみ)が設計した。館内には茶室や和室が設けられ、茶道や華道を通して陶芸研究に活用している。屋上にはオブジェのような明かり取り窓があり、4方向から入る陽光を斜めに反射させ、柔らかな光で展示室を照らすなど、堀口こだわりの意匠が施されている。

上には堀口捨己が好んで表現したオブジェのような明かり取り窓がある
上には堀口捨己が好んで表現したオブジェのような明かり取り窓がある

 人材育成は、研修生事業として続けられ、常滑焼の技術や表現を継承しながら新しい価値観を生み出している。

2023年7月2日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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