日本庭園に面した大広間。廊下には金色の兜が飾られていた
日本庭園に面した大広間。廊下には金色の兜が飾られていた

 掘割に沿って、名物の「うなぎのせいろ蒸し」を提供する飲食店が並ぶのんびりとした町並みの中で、料亭旅館「柳川藩主立花邸御花」(福岡県柳川市)が異彩を放っている。柳川藩主立花家の別邸を、明治時代に伯爵家となった第14代当主の立花寛治(ともはる)が、現在の姿に整備した。「御花畠(おはなばたけ)」と呼ばれる場所にあったことから、戦後、屋敷を料亭旅館にする際に屋号を「御花」とし、今に伝わる。

通りに面した重厚な門の奥に建つ白亜の西洋館が目を引く
通りに面した重厚な門の奥に建つ白亜の西洋館が目を引く

 いかめしい金属製の門から続く白亜の西洋館は、1910(明治43)年に迎賓館として、建築家の西原吉治郎がフレンチルネサンス様式を取り入れて建てた。柱や、階段の手すりの柱頭飾りには細密な彫刻が施されている。シャンデリアは建設当時のもので、柔らかい光をともす。

天井中央にはしっくいで繊細な彫刻が施されている
天井中央にはしっくいで繊細な彫刻が施されている

 日本建築の大広間の廊下には、古くは桃山時代に兵士に着用させたと伝わる「金箔押桃形兜(きんぱくおしももなりかぶと)」が並べて掛けられ、独特の緊張感が漂う。100畳の大広間に座り、日本庭園「松濤園」を眺めているとタイムスリップしたかのようだ。

北側の掘割に面した門からは川下りの船頭の歌が聞こえる
北側の掘割に面した門からは川下りの船頭の歌が聞こえる

 土塀の門から、ゆったりと掘割を進むどんこ舟が見え、船頭の歌声が聞こえてきた。

2023年5月14日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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