議長席を中心に弧を描くように議員席が広がる。内装にヒノキやカエデなどを使い、格調高く造られた議場のしっくい天井は、木枠でコントラストがつけられている。
山口県旧県会議事堂は1916(大正5)年、国会議事堂を手掛けていた大蔵省営繕官僚の妻木頼黄(よりなか)、大熊喜邦(よしくに)に加え、京都高等工芸学校教授の武田五一らが設計した。後期ルネサンス様式を基調とするレンガ造りで、細部には当時の欧州で流行していた幾何学的な意匠を取り入れた。また、東洋風、和風のデザインも加えて建物全体に独自色を出した。
2階の知事室など各部屋にはそれぞれ異なる天井と壁紙が採用された。知事応接室の壁紙のストライプや波形、エンボス模様は、いずれも当時モダンな意匠だった。
65(昭和40)年、老朽化と相次いだ台風被害のために取り壊し計画が持ち上がったが、住民らによる保存運動で撤回された。84年に国の重要文化財に指定。今は議会資料館のほか、音楽会や講演会の会場としても市民に開放されている。
2023年4月9日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載