3階ホールの木組みの天井は東洋の様式美を持つ。四隅にあるのが斗栱。建物には東西文化の融合が理念にある

 坂道を上がった緑豊かな大倉山公園内で、ギリシャ神殿を思わせる建物が出迎えてくれた。横浜市大倉山記念館(同市港北区)は、実業家の大倉邦彦が「大倉精神文化研究所」の本館として建てたもので、1932(昭和7)年に完成した。

神殿を思わせる外観

 明治・大正期の銀行建築を多く手掛けた長野宇平治が設計した。エントランスホールの開放感がある吹き抜け空間は高さ約21㍍で、ステンドグラスを通して光が降り注ぐと黄金色に彩られる。見上げると、塔屋の内側にはライオンとワシのテラコッタ製の彫刻が鎮座しており、凝視されているようにも感じる。

エントランスホールは塔屋の天井まで吹き抜け空間が広がり、ライオンとワシの彫刻が交互に配置されている

 3階ホール天井はケヤキの木組みで構造美を誇るほか、質の高い音を生み出すことから、この場で小規模の音楽会が開かれる。また、天井を支える柱の柱頭には、斗栱(ときょう)と呼ばれる、寺や神社の重たい屋根などを支える建築様式が取り入れられた。

特別に許可を得て撮影した塔屋外側の裾ぼそりの列柱。全体にシャープな印象を与える

 横浜市が同研究所から寄贈を受け、84(昭和59)年に記念館としてオープン。91(平成3)年に同市指定有形文化財になった。

2023年4月2日 毎日新聞・日曜くらぶ 掲載

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